光……希望

2011/08/12 06:56
6月の末、マスターは倒れた。
彼には、かたくなに守るものがあった。

お店で出す料理だ。彼が修行した西洋料理は、その頃主流だった。
東京會舘・精養軒・帝国ホテル……、それこそ高島屋や三越のレストランでも、家族のあこがれの食べ物だった。

今風のお客が求める料理を出せばよいのにと思ったこともあった。

でも彼は、かたくなに守るものがあった。
週に一度の休日、外出先で倒れた。脳幹出血だったのだ。
集中治療室に搬入され、症状は重かった。チューブにつながれ、彼は身動きも出来なかった。

妻は今も通う。子ども達も通う。
意識はずっと戻らない……

そんな彼のチューブがはずされたのは、病院の治療と家族の思いだ。

「戻ってきて欲しい!」
妻の希望は、彼の変化だ。

昨夜、「彼が手の指を動かした」とメールがあった。
「今、お盆の季節にはいり、忙しいのでしょう」と。

「東京は7月盆だし、墓参はあるけれど、副住職がいるから大丈夫です」

今日、彼を久しぶりに見舞うことにした。

彼がかたくなに守っていたものは、家族の心だった。



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