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終の棲家は決まったが、いつなのかは決まっていない。



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私を早く連れてって!
それは、小さな声だった。
「私を早く連れてって!」
しかも、2回も言われた。

防災訓練の日だった。冬だというのに、日が照って暖かな日だった。
80名以上の人たちが参加した。
起震車やけむり体験、心臓マッサージAED操作、災害用機器の説明、安否確認訓練、非常食の試食と。
みんなで、1ヶ月以上かけて準備したものだ。

消防署に消防団、小学校がかかわり、大勢がかかわった。気も少し張った。
挨拶もした。
試食しながら、試食場所に「美味しいね、結構いけるよ。あっちあっち」と人を誘った。
署長さんも、最初の挨拶から最後まで、丁寧に大勢に接してくれた。
消防団は、消防署の手伝いといいながらも、地元に溶け込んでくれた。
絆を結ぶとは、日々、繰り返し姿を見せることだ。

この集いの中、幸せの姿が見えないひとがいた。笑顔だったが。

「私を早く連れてって!」

そんなに悲痛の声には聞こえなかったが、あちら側とこちら側を描いている老いた人がいた。

日々に変わる老いの現実と言おうか、あちら側がひそんでいる。
別段気をつける必要もないし、隙を見せる覚悟も必要もない。

鬱か?

そうも見えなかったが、現実は、淡々すぎる日常もないはずなのに、よくよくそう見える。

自分を見つめすぎることもよくない。

夫を亡くして、何年経つのだろうか、何十年かも知れない。
黒い大きな犬を飼っていたが、もういないのかもしれない。

一人暮らすと言っても、二世帯住宅だし……
人のよい、本当人の善いと言う言葉がピッタリの夫婦だった。

電話をしてみようか?投げか掛けられた言葉が波紋を広げるのだ。


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